知ってほしい、甲状腺眼症の私がみた世界
~Aさんの場合~

  
『甲状腺眼症』という病気をご存じでしょうか?甲状腺眼症は、バセドウ病患者さんの25~50%で発症するといわれており1,2)、免疫の異常によって目の周りの組織に炎症が起こる自己免疫疾患です。
甲状腺眼症では、びっくりしたときのように目が見開いて見えたり、眼球が前に飛び出ているような見た目に変化したりする場合もあれば、モノが二重に見えてしまうなど視機能が低下する場合もあり、症状や日常生活へ及ぼす影響は人それぞれです。
今回は、甲状腺眼症患者であるAさんに、バセドウ病に気付いたきっかけや甲状腺眼症による困りごと、甲状腺眼症の専門医へたどりついた経緯についてインタビューした内容をお届けします。「甲状腺眼症に罹っていて、最近なぜか見えにくくなった」。このような症状を感じている方は甲状腺眼症かもしれません。ご自身の症状の原因が分からず悩んでいる方の気付きにつながれば幸いです。

1)Mamoojee Y, et al. Graves’ Orbitopathy: A Multidisciplinary Approach - Questions and Answers. Basel, Karger, 2017; 93-104.

2)Lazarus JH. Best Pract Res Clin Endocrinol Metab. 2012; 26(3): 273-279.

Aさんのインタビュー風景
  

Aさん
50代・女性

2024年にバセドウ病を発症。当初、眼球突出や眼瞼腫脹(まぶたの腫れ)などの顔貌の変化は
なかったが、数ヵ月後、視機能低下の症状が現れた。

バセドウ病発覚から目の症状の発現まで

インターネットで得られる情報からバセドウ病を疑い甲状腺クリニックでの 診断へとつながった

2024年前半ごろから体重が減り始め、 心臓の鼓動を強く感じる動悸などの症状が現れました。いつもと同じようにご飯を食べていたにもかかわらず体重が10kg程度減少し、また、2~3メートル歩いただけでめまいや息切れを感じるようになるなど日常生活にも影響がありました。これらの症状を不思議に思いインターネットで調べていたところ、バセドウ病でよく見られる症状に多く当てはまると感じ、近隣の甲状腺クリニックを受診しました。そこでバセドウ病と診断されました。
バセドウ病の主治医はパンフレットを用いて疾患について説明してくださり、その中に目の症状についての記載はあったのですが、当時は全身症状に自分の注意が寄っていたため、目の症状についてはそこまで気にはしていませんでした。その数ヵ月後、今度は目に異変が起こり始めました。
甲状腺眼症による困りごと

視界が白っぽくぼやけて見えることによって行動範囲が制限された

視界がぼやけて困っているイラスト
バセドウ病と診断されてから数ヵ月後、視界が白くぼやけるようになり、見え方がおかしくなっているのを感じました。自宅では、物の場所を把握しているのでそこまで不便さを感じませんでしたが、外出時は視界全体に白い煙がかかったようで、どこに何があるか分からない中で歩くことになり怖さを感じました。
そのため、日常的な買い物でさえも新しいお店に行く機会は少なくなり、道順や商品の場所を理解しているお店に通うことが多くなりました。また、趣味のひとつが散歩でよくストレスを発散するために近所を歩いていたのですが、症状が現れ始めてからは外出自体に不安を感じ、その機会もなくなりました。
このように、不要な外出は避けるようになり、外出する際もできるだけ交通量の少ない時間、通りを選んで出かけるようになりました。
バセドウ病による疲れやすさと見えづらさという目の症状によって仕事にも影響がありました。とても疲れやすかったことから週1回の勤務が可能な仕事を探していたのですが、この頻度で勤務できる仕事はなかなか見つかりませんでした。そしてようやく小さな事業所でトイレや廊下を清掃する仕事に就いたのですが、廊下の隅のごみが見えなくなり、感覚でモップ掛けを行わざるを得ませんでした。
仕事がしづらくて困っているイラスト
自宅でも、スマートフォンやテレビの文字が見えづらいといった このように、前向きに過ごそうと努力はしていたものの、甲状腺眼症によって生活のさまざまな場面でこれまでできていたことができなくなり、行動範囲も狭まってしまいました。
症状を向き合って楽しく日常を送っているイラスト
自宅でも、スマートフォンやテレビの文字が見えづらいといった困りごとがありました。しかし、老眼鏡をかけたり、スマートフォンの画面を拡大したりといった工夫をし、テレビは音声だけで楽しむなど、可能な限り前向きに過ごすようにしていました。
このように、前向きに過ごそうと努力はしていたものの、甲状腺眼症によって生活のさまざまな場面でこれまでできていたことができなくなり、行動範囲も狭まってしまいました。
専門医へつながった経緯・先生とのコミュニケーション

症状のことを正直に伝えたことが甲状腺眼症の専門医への紹介につながった

私の場合、見た目として目に症状が出ているわけではなかったのですが、見え方がおかしかったので、当初は目というよりもしかしたら脳に何か異常があるのかなと、不安に思っていました。
まずは近隣の眼科を受診しました。その病院では、正直に「目に腫れや痛みなどの変化が出ているわけではないが、視界が白くぼやけて物が見えなくなった」ことと「バセドウ病である」ことを先生にお伝えしたところ、より詳細な検査が必要とのことで総合病院の眼科へ紹介いただきました。そして、総合病院では初診当日にMRIなどの検査を行ってくださいました。その場で診断はつかなかったものの、急な視力の低下が認められ、失明する可能性があったことから「一刻も早く専門医を受診してください」と、より専門性の高い病院を受診できるようすぐに手続きしてくださいました。そして、甲状腺眼症を診療している大学病院の眼科の先生に診察していただけることになりました。
Aさんからのメッセージ
私の経験からみなさまにお伝えしたいのは、体調に異変を感じたら、小さな病院でもいいのですぐに受診してほしいということ、そして、ご自身の症状について正直に先生に説明することの2つです。
私は、甲状腺眼症の専門医の紹介までスムーズに至ったケースだと思います。最初に体重が減るなどの症状が現れたときも、症状についてインターネットで調べた結果、バセドウ病かもしれないと感じ、最初の病院でバセドウ病と診断を受けることができました。
また、眼科では、見た目の変化や痛みなどの症状はないものの、見え方に異変を感じたことを伝えることで、詳細な検査および専門医への紹介につながりました。
見た目の変化がない方ほど、ご自身の症状の原因が分からず悩んでしまうかもしれませんが、たとえ症状を上手く言葉にできないとしても、自身が感じているありのままを先生にお伝えすることが、疾患の早期発見につながったケースがあることを知ってもらえたらと思います。
Aさんのメッセージ写真
今回のAさんのように、見た目の変化がなくとも、見え方の変化が甲状腺眼症の重要なサインになることがあります。甲状腺眼症は治療方法のある病気です。見え方に異変を感じた場合は、症状や困っていることについてかかりつけの内科もしくは眼科の先生に相談し、必要に応じて専門医の受診を検討してください。