知ってほしい、甲状腺眼症の私がみた世界
~働き盛りのIさんの場合~

  
『甲状腺眼症』という病気をご存じでしょうか?甲状腺眼症は、バセドウ病などの甲状腺疾患とともに発症しやすい病気です。
甲状腺眼症では、びっくりしたときのように目が見開いて見え、眼球が前に飛び出るように見た目が変化する場合もあれば、モノが二重に見えてしまうなど「視る」機能が低下する場合もあり、症状や日常生活へ及ぼす影響は人それぞれです。
今回は、甲状腺眼症を発症されたIさん(40代・男性)の体験談をお届けします。
写真_Iさん 40代・男性
  

Iさん
40代・男性

2023年にバセドウ病の徴候が出始め、2024年5月にバセドウ病と診断された。
その後、甲状腺眼症を発症し、専門医のもとで治療を開始した。

バセドウ病と甲状腺眼症の発症

バセドウ病と診断されてから約3ヵ月で目の症状が出始めた

2023年12月から体重減少、不眠、発汗などの症状が現れ始めました。特に、体重は20kg程度減少し、「これはおかしいな」と違和感を持ったため、心療内科や消化器内科などを受診しました。しかし、その時点では異常は見つかりませんでした。 その後も症状は続き、2024年5月初めには下痢が止まらなくなり、動けないような状態になりました。そして、もう一度消化器内科を受診し、超音波検査や内視鏡検査を実施したところ、またしても異常はなかったのですが、「もしかしたら甲状腺に原因があるのかもしれない」と甲状腺の専門医へ紹介いただくことになりました。そして、バセドウ病であることが判明しました。
このように、症状が出始めてからバセドウ病の診断が出るまでには5ヵ月と時間を要しました。
その後、8月ごろから目の腫れやむくみが気になり、視野の上のほうが見えづらくもなりました。そして、10月にはモノが二重に見え、痛みも伴うようになり、日常生活に支障を来すほどに悪化が進んだため、甲状腺眼症の専門医を紹介していただき受診することを決めました。
  
甲状腺眼症診断まで

目の症状に気づいた時点で医師に相談すればよかった

バセドウ病を有している方では、遅れて目の症状があらわれる場合があることは元々知っていました。バセドウ病を診てくださっている先生からも、「目に症状が出てくる可能性があるよ」と説明を受け、継続的に様子を気にしてくださってもいましたが、まさか自分が当事者になるとは思ってもいませんでした。また、最初のうちは目の腫れやむくみといった症状も「少し気になるな」という程度であったこと、さらに、追加で眼科も受診しなくてはいけなくなることを負担に感じたため、自分から積極的に目の症状について説明はしませんでした。
早い段階で症状には気づけていたものの、積極的に行動を起こさないまま過ごしていたら、急に目の痛みを感じ、モノが二重に見えるようになりました。今になってみると、症状が悪化してからではなく「目が腫れてきた」「目が少し出てきた」と思った時点で先生に相談しておけば、より早く治療を受けることができたのではないかと、強く感じています。
写真_目の症状に気づいた時点で医師に相談すればよかった
  
日常生活での困りごと

日常生活の“当たり前”ができなくなった

イラスト_日常生活の“当たり前”ができなくなった 1
甲状腺眼症によって、日常生活でこれまでにできていたことができなくなりました。まず、日常的に涙が止まらないことが多くありました。特に、スマホやテレビの画面を見るときは、絶えず目にティッシュを当てていなければならないほどでした。朝とお風呂上がりに症状が出て、特にお風呂上がりは2時間くらい涙がぼろぼろとあふれていたように記憶しています。
車の運転にも大きな影響がありました。両眼で見るとモノが二重に見える「複視」という症状の影響で、道路の分岐点が3本、4本に分かれているように見え、非常に危険な思いをしたことを覚えています。複視が出始めてからは不要な外出は控えるようになりました。
ほかには、休日の楽しみであったゴルフも、打ったボールがどこに行ったかわからないことがストレスで、できなくなってしまいました。
イラスト_日常生活の“当たり前”ができなくなった 2
ほかには、休日の楽しみであったゴルフも、打ったボールがどこに行ったかわからないことがストレスで、できなくなってしまいました。
このように、これまで視覚に頼ることによってできていたさまざまな活動ができなくなり、正直気持ちを強く持てない時期もありました。そんな中、家族の支えは大きく、娘と遊んだり、家族でゆったり過ごす時間が増えたりしたことが私の心の支えになりました。
仕事での困りごと

仕事のパフォーマンスにも影響があった

私は医療関係の営業の仕事をしており、主な業務は複数の病院を周り、先生と面会することです。通常、先生には診察の合間に時間をいただくことが多く、待合室で診察が終わるのを待つようにしています。大きな病院では、診察室前の待合室で患者さんの順番がモニターに表示されていることがあり、先生が診察を終えるまでの時間を予測する参考としていました。しかし、その数字が見えなくなってしまったことで、先生がいつ診察室から出てくるのかを把握することができなくなりました。そのため、診察が終わり先生が急に出てこられたときは、焦ってしまい大事な話をすることができなかったなど、仕事のパフォーマンスはかなり落ちていたように思います。
イラスト_仕事のパフォーマンスにも影響があった
Iさんからのメッセージ
私は、「目の腫れやむくみ程度の症状であれば甲状腺眼症ではないだろう」という思い込みから、先生になかなか相談できずにいました。その結果、甲状腺眼症の専門の先生に紹介してもらうのが遅くなってしまいました。
私からみなさんにお伝えしたいのは、「少しでも目に違和感が生じた段階で迷わずかかりつけ医に相談し、専門医を紹介してほしい旨を伝えてほしい」ということです。症状は個人によって異なると思いますが、専門の先生を受診することで不安は少しでも和らぐと思います。
どうか、勇気をもって先生に想いを伝えてみてください。
写真_Iさんからのメッセージ
今回のIさんのように、バセドウ病を患っており目に違和感のある場合は、甲状腺眼症の可能性があります。
甲状腺眼症は治療方法のある病気です。かかりつけの内科もしくは眼科の先生に相談し、専門医へ紹介いただいてください。